「ぬくもりのある服には、物語がある。」
ぬくもりのある服には、物語がある。
Furugi Bonを始めてから、何度も胸の中で繰り返してきた言葉です。
今日は、その言葉をあらためて実感させてくれた、ひとりの常連さんと一着のパーカーのお話を、読み切りの“物語記事”として残してみようと思います。
「これ、もう10年くらい着てるんだよ」
ある日の営業中。いつも穏やかな笑顔で来てくださる常連さんが、ふとこんな一言をこぼしました。
「このパーカーさ、もう10年くらい着てるんだよ。」
そう言いながら、前を向いて立ってくださったときの姿が、とても印象的で。
思わず「もしよかったら、そのパーカーの写真を撮らせてもらってもいいですか?」とお願いしました。
お客様は少し照れくさそうに笑って、「いいですよ」と快く承諾してくださって。
そこから、この物語が始まりました。

10年の時間をまとったCHROME HEARTSのパーカー
ブランドは、CHROME HEARTS(クロムハーツ)。
ブラックのジップパーカーに、左胸には控えめなクロス、背中には大きく「CHROME HEARTS」のロゴとクロスが入った、ブランドらしさたっぷりの一着です。

前を閉めたときに覗く、味の出たジップ。
金属のパーツには、ほどよいくすみと小さな傷があって、そこに重ねてきた年月がそのまま刻まれているように見えました。

左胸に入るCHクロスは、10年着られているとは思えないくらい、プリントの線がまだくっきりと残っています。
けれど、よく見るとインクの表面が少しだけやわらかくなっていて、「新品とは違う落ち着き」が生まれていました。

背中には、クロムハーツを象徴するロゴとクロスが大胆に入っています。
ここもひび割れることなく、でも新品のピカピカさは少し抜けていて、ちょうど“着慣れたバンドTシャツ”のような雰囲気に育っていました。
タグに刻まれた「USA製」と、変わらない着心地

首元には、CHROME HEARTSのホースシュータグ。
その横の洗濯タグには、「100% COTTON」「MADE IN U.S.A」の文字が並びます。
ボディはしっかりとしたコットン裏起毛。
10年着ているとは思えないくらい、シルエットの“だれ”が少なくて、袖口や裾のリブもまだ現役。
「いいボディで作られている服は、時間が経ってもちゃんと形が残るんだな」と、あらためて感じました。
日常に溶け込んだ、クロムハーツの黒いパーカー
この日は、ボルドーのパンツとスニーカーに合わせて、黒いパーカーをさらっと羽織って来てくださっていました。
クロムハーツというと、“シルバーアクセサリーのイメージが強いブランド”という方も多いかもしれません。
でも、こうやって10年着込まれたパーカーを見ると、ブランド名よりも先に、
「この人の日常をずっと見てきた相棒」
という言葉が浮かんできました。
仕事に向かう朝、休日の買い物、ふとした散歩。
袖口のすり減りや、フードまわりの色落ちには、きっとそんな時間がぎゅっと詰まっているはずです。
「服を売る」というより、「時間と記憶を預かる」仕事
古着屋をしていると、つい「どこのブランドか」「いつごろの年代か」「タグはどれか」という“情報”に目が行きがちです。
今回ももちろん、RiriジップやUSA製タグなどを見て、つい職業病のようにチェックしてしまいました。
でも、常連さんの「もう10年くらい着てるんだよ」という一言を聞いた瞬間、
頭の中にあったスペックの情報よりも、胸の中にふっと温かいものが広がりました。
古着屋の仕事は、ただ“服を売る”だけじゃなくて、
その服がこれから歩んでいく時間と記憶を、そっと預けてもらう仕事なのかもしれません。
いつかこのパーカーが役目を終える日がきても、
「あのクロムハーツ、よく着たなぁ」と笑って思い出してもらえたら。
そう思うと、服屋として、少しだけ誇らしい気持ちになります。
ぬくもりのある服には、やっぱり物語があった
Furugi Bonの合言葉のように使っている、
「ぬくもりのある服には、物語がある」という言葉。
それは決して、きれいな言葉だけでできているわけではなくて、
袖口のほつれや、色あせたプリントや、少しだけくたっとしたフードの形の中に、
静かに息づいているものなんだと思います。
今回、常連さんのクロムハーツのパーカーに出会って、
そのことをあらためて教えてもらいました。
もし、あなたにも「ずっと着ている一着」があれば、
ぜひその物語を聞かせてください。
Furugi Bonは、そんな服と人の記憶を、ゆっくりと受け止められるお店でありたいなと思っています。

ぬくもりのある服には、やっぱり物語がある。
このクロムハーツのパーカーのように。
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