南極を着る。白いUSA製スウェットに残された「PALMER STATION」とは何だったのか。
白いスウェットの胸に、大きく描かれた南極大陸。
その周囲を囲むように書かれているのは、 「PALMER STATION / ANTARCTICA」という文字です。
最初にこの一着を見たとき、気になったのはデザインの格好よさだけではありませんでした。
「PALMER STATIONって、何だろう?」
調べてみると、その名前は架空のものではありませんでした。 海を越え、さらに南へ。 このスウェットの先には、南極に実在するアメリカの研究基地がありました。

胸に描かれた「PALMER STATION」
まず目に入るのは、円形にデザインされた大きなフロントプリントです。
中央には南極大陸。 その背景には濃いネイビー、そこから伸びる黄色い放射状のライン。 外周には赤い星が並び、上には「PALMER STATION」、下には「ANTARCTICA」と記されています。

よく見ると、南極半島の方向には黄色い星状の印も見えます。
これが何を意味しているのか。 今回確認した資料だけでは、その意味まで断定することはできませんでした。
だからこそ、想像だけで意味を付け加えるのではなく、まず「PALMER STATION」という名前そのものを追ってみることにしました。
Palmer Stationは、本当に南極にあった
Palmer Station(パーマー基地)は、アメリカ国立科学財団(NSF)が運用する米国南極プログラムの研究基地です。
場所は南極半島の西側、Anvers Island(アンヴェール島)。 現在も年間を通して運用されている、アメリカの南極研究拠点のひとつです。
NSFによれば、現在のPalmer Stationは1968年に設置されました。 一方、その前身となる最初の基地は1965年に建設されています。
現在の基地は南極圏より北側に位置する唯一のアメリカの南極基地で、特に海洋生物学をはじめ、オキアミ、ペンギン、アザラシ、海洋生態系、気候などの研究が行われています。
つまり、このスウェットに書かれた「PALMER STATION」は、雰囲気を出すために作られた架空の地名ではありません。
南極に実在し、現在も研究が続けられている場所の名前なのです。
なぜ「Palmer」という名前なのか
基地の名前は、アメリカ人の船乗り Nathaniel Brown Palmer(ナサニエル・ブラウン・パーマー) に由来します。
NSFの資料では、Palmerは1820年に南極を目撃した記録を残した最初のアメリカ人とされています。
その名前が、一世紀以上を経てアメリカの南極研究基地に残り、さらに後年、一枚のスウェットの胸にも残されている。
そう考えると、このプリントの見え方が少し変わってきます。
1965年の「Old Palmer」から、現在の基地へ
Palmer Stationの歴史をもう少し辿ってみます。
最初の基地は1965年、Anvers IslandのNorsel Point付近に建設されました。 これは現在「Old Palmer」と呼ばれている場所です。
その後、より恒久的な施設がGamage Point側に建設され、 1968年3月20日に現在につながるPalmer Stationが正式に開設されました。
当時の記録には、米海軍の建設部隊や沿岸警備隊の砕氷船などが基地建設や物資輸送を支えたことも残されています。
一枚のスウェットに書かれた短い名前の後ろには、 アメリカの南極観測と研究の長い歴史がありました。
そして、もう一つの手掛かり。「MADE IN THE U.S.A.」
このスウェットには、首元にもう一つ重要な手掛かりが残っています。

タグには、
MY SWEATSHIRT
IS MADE IN THE
U.S.A.
L 42-44
と記されています。
ブランド名を大きく掲げるのではなく、 「私のスウェットはアメリカ製」と書かれた、少し変わったタグです。
さらに品質表示には、 50% POLYESTER / 50% COTTON、 そしてRN 70047の表記が確認できます。

同じスウェットが、もう一着存在した
調査を進めていくと、さらに興味深いものが見つかりました。
海外のヴィンテージ市場に、 今回の一着とほぼ同じPALMER STATIONのスウェット が確認できたのです。
プリントだけではありません。 白いラグランスウェット、首元の 「MY SWEATSHIRT IS MADE IN THE U.S.A.」タグ、 L 42-44というサイズ表記、さらにRN 70047まで一致する個体が確認できます。
このことから、少なくとも今回の一着だけに後からプリントされた一点物ではなく、 同じ仕様で複数作られた衣類だった可能性が高いと考えられます。
海外では1980年代のヴィンテージとして紹介されている同型品もあります。 タグやボディの仕様を含めても、その年代感とは矛盾しません。
ただし、製造メーカーの当時のカタログや納品記録など、 製造年を直接証明できる資料までは今回確認できませんでした。
そのためBON JOURNALでは、 「1980年代頃とみられるUSA製ヴィンテージ」 として紹介します。
では、研究者が着ていたスウェットなのか?
ここで、一番気になる疑問が出てきます。
「Palmer Stationで働いていた研究者やスタッフが着ていたものなのだろうか?」
残念ながら、そこまでは分かりませんでした。
今回確認できた資料の範囲では、このグラフィックがPalmer Stationの正式な公式ロゴだったことや、 研究者・スタッフへの支給品だったこと、 あるいは基地内で販売されたスーベニアだったことを証明する一次資料は確認できていません。
そのため、 「Palmer Station公式スウェット」 「研究員支給品」 「基地内販売品」 とは断定しません。
分かっているのは、 Palmer Stationが実在するアメリカの南極研究基地であること。 そして、同じプリントと同じUSA製ボディを使ったスウェットが複数存在していることです。
古着だから、分からないことも残る
古着を調べていると、すべての答えが見つかるとは限りません。
誰が作ったのか。 どこで販売されたのか。 誰が最初に着たのか。 そして、このスウェットは本当に南極まで行ったことがあるのか。
そこまでは、この服は教えてくれません。
でも、タグとプリントを手掛かりに調べていけば、 南極半島沖の小さな島にある研究基地まで辿り着くことができます。
答えが全部揃わないからこそ、古着には調べる面白さが残っています。
白いボディに残った、小さなシミ
この一着は、長い年月を経た古着です。
全体として白いボディの印象は比較的きれいですが、 よく見ると数か所に薄いシミや変色があります。



古着の場合、こうした部分を「なかったこと」にして紹介するのではなく、 現在残っている状態も含めて記録しておきたいとBONでは考えています。
ラグランスリーブと、50/50ボディ
形はラグランスリーブ。 肩の位置を決めすぎない、ヴィンテージスウェットらしいシルエットです。

素材は50%ポリエステル、50%コットン。 裏側には起毛が残っています。

表記サイズはL 42-44。 実寸は、身幅約54cm、着丈約64cm、裄丈約73.5cmです。

背中には、何もない
背面は無地です。

前から見ると強いグラフィック。 後ろから見ると、真っ白なラグランスウェット。
この潔い組み合わせも、この服の魅力だと思います。
南極を着る。
最初は、白いヴィンテージスウェットでした。
胸に書かれた「PALMER STATION」という言葉を調べただけで、 1965年の最初の基地、1968年に開設された現在の基地、 アメリカの南極研究、そしてNathaniel Brown Palmerという人物まで物語が広がっていきました。
それでも、このスウェットそのものについては、まだ分からないことがあります。
どこで売られていたのか。 誰のために作られたのか。 そして、最初の持ち主はこの服をどこで手にしたのか。
もしかすると、その答えはもう見つからないかもしれません。
それでも胸には、 「PALMER STATION / ANTARCTICA」 という文字が残っています。
服を入口にすると、知らなかった場所へ辿り着くことがある。
今回辿り着いた場所は、 地球のずっと南にある、アメリカの小さな研究基地でした。
商品情報
PALMER STATION ANTARCTICA Vintage Sweatshirt
Made in U.S.A.
表記サイズ:L 42-44
素材:50% Polyester / 50% Cotton
RN:70047
身幅:約54cm
着丈:約64cm
裄丈:約73.5cm
※ヴィンテージ・古着のため、薄いシミや経年変化があります。掲載写真をご確認のうえ、古着の特徴としてお楽しみください。

本当に南極で使われていたのか。
誰のために作られたのか。
まだ分からないことは残っています。
だからこそ、この一着には、調べ続けたくなる余白があります。
Palmer Stationって、本当に南極にあるの?
ぼんちゃん先生
あるよ。Palmer Stationは、南極半島の西側にあるAnvers Islandに置かれたアメリカの研究基地なんだ。
現在も年間を通して運用されていて、海洋生物やペンギン、アザラシ、オキアミ、気候など、さまざまな研究が行われているんだよ。
このスウェットはPalmer Stationの公式品なの?
ぼんちゃん先生
そこは、まだ断定できないよ。
同じプリント、同じUSA製タグ、同じRNを持つスウェットはほかにも確認できたんだけど、Palmer Stationやアメリカ南極プログラムの公式支給品だったことを証明する資料までは見つかっていないんだ。
だからBONでは「公式品」や「研究員支給品」とは書かず、分かっている範囲だけを紹介しているよ。
これは1980年代のスウェットなの?
ぼんちゃん先生
1980年代頃のものとみているけれど、製造年を一点まで特定できる資料はまだ確認できていないよ。
海外では同じデザインや同じタグを持つ個体が1980年代のヴィンテージとして紹介されていて、ボディやタグの仕様もその年代感とは矛盾しないんだ。
だから「1980年代製」と断定するのではなく、「1980年代頃とみられる」としているんだよ。
「MY SWEATSHIRT IS MADE IN THE U.S.A.」って何?
ぼんちゃん先生
首元に付いているタグの表記だよ。今回の個体には「MY SWEATSHIRT IS MADE IN THE U.S.A.」と書かれていて、サイズはL 42-44なんだ。
裏側の品質表示には50%ポリエステル、50%コットン、そしてRN 70047という番号も確認できるよ。
こういうタグや番号も、古着の素性を調べる大切な手掛かりになるんだ。
シミがあるのに、どうして記事に残すの?
ぼんちゃん先生
古着だからこそ、きれいなところだけではなく、今残っている状態も記録しておきたいからだよ。
この一着には薄いシミや経年変化がある。でも、それを隠して「きれいなヴィンテージ」と紹介するより、どこにどんな跡があるのかまで見てもらう方が、この服を正しく伝えられると思うんだ。
プリントやタグだけでなく、そうした経年の跡も含めて一着の履歴なんだよ。
参考資料
- U.S. National Science Foundation(NSF)「Palmer Station」
- U.S. Antarctic Program「Palmer Master Plan」
- Antarctic Journal of the United States, May–June 1968 「Permanent Palmer Station Commissioned」
- PalmerStation.com「Old Palmer / Palmer Station History」
- 海外ヴィンテージ市場における同型PALMER STATIONスウェットの確認例
※本記事では、確認できた資料と現物の情報をもとに記載しています。製造年、販売場所、当時の用途など、一次資料で確認できない部分については断定を避けています。
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