“Good Vibrations”を拾う。青いRUSSELL(ラッセル)に残された、三つの手の意味。
青いスウェットの背中に、三つの手が並んでいた。
その下には、ひと文字ずつ。
W、M、U。

表に返してみると、こちらにも少し不思議な言葉が残っている。
We’re Picking Good Vibrations Up
そして、その下に書かれていたのが、
The Charles VanRiper Language, Speech & Hearing Clinic
という名前だった。
最初は、どこかの学校や施設で作られた古いスウェットなのだろうと思った。
でも、この名前と三つの手を追いかけてみると、 一着の古着の向こう側から、 「話すこと」「聞くこと」「伝えること」を研究してきた場所が見えてきた。
“Good Vibrations”を拾う

フロントを近くで見ると、 白い文字が人物の線画を囲むように配置されている。
We’re Picking Good Vibrations Up.
直訳すれば、 「私たちは良い振動を拾っている」といった意味になる。
もちろん、英語の “good vibrations” には、 「いい感じ」「いい雰囲気」といったニュアンスもある。
しかし、このスウェットに書かれている場所は、 Language, Speech & Hearing Clinic。
言語、発話、そして聴覚を扱うクリニックだ。
音は振動として伝わり、それを私たちは耳で受け取る。
そう考えると、 “Picking Good Vibrations Up” という言葉は、 単に「いい感じ」というだけではなく、 「振動を拾う」という意味まで重ねた言葉遊びのようにも読める。
ただし、この解釈が当時のデザイン制作者の意図だったことを示す資料までは確認できていない。
だからここでは、 「そう読むことのできるデザイン」 として残しておきたい。
背中に残された、三つの手

このスウェットをさらに面白くしているのが、背中だ。
三つの手の下に、 それぞれ W・M・U の文字が添えられている。
この「WMU」は、 Western Michigan University を指すと考えるのが自然だ。
そして描かれた手は、 アメリカ手話(ASL)の指文字で W、M、Uを表したものと対応している。
大学名を普通のロゴで大きく見せるのではなく、 「手」を使って大学名を表現する。
言語・発話・聴覚を扱うクリニックのスウェットとして見ると、 このバックプリントにも意味が生まれてくる。

Charles Van Riperとは誰だったのか
フロントに書かれていた Charles Van Riper という名前。
調べてみると、 これは架空の人物でも、単なるブランド名でもなかった。
Western Michigan Universityの公式資料によると、 Charles Van Riperは1936年にUniversity of IowaからWestern Michigan Universityへ移り、 スピーチクリニックを設立するとともに、 speech correction(言語・発話障害の矯正)を学ぶためのカリキュラムを整えていった。
このクリニックは、 アメリカでも初期の大学スピーチクリニックの一つとされている。
Van Riper自身も、 特に吃音の研究と治療で知られる人物となった。
現在もWestern Michigan Universityには、 Charles Van Riper Language, Speech and Hearing Clinic が存在し、 言語・発話・聴覚に関するさまざまなサービスを提供している。
つまり、この青いスウェットに残された名前は、 現在まで続く一つのクリニックの歴史につながっていた。
参考: Western Michigan University「Charles Van Riper Language, Speech and Hearing Clinic」
参考: Western Michigan University「Speech, Language and Hearing Sciences – History」
そして、ボディはRUSSELLだった

首元には、 SUPER WEIGHTS BY RUSSELL のタグが残っている。
表記は、
- サイズ:S 34-36
- 50% POLYESTER
- 50% COTTON
- MADE IN U.S.A.
ボディはラグランスリーブ。 内側には裏起毛が残っている。
ヴィンテージ市場では、 このタイプのSUPER WEIGHTSタグを1980年代頃のものとして紹介する例が見られる。
ただし、RUSSELL自身による公式の完全なタグ年代資料を今回確認できたわけではない。
そのためBON JOURNALでは、 タグだけを根拠に製造年を断定することはしない。
USA製のRUSSELL SUPER WEIGHTSボディであること。
まずは、実物から確認できる事実を大切にしたい。

裾をめくると、まだ起毛が残っていた

表から見るだけでは分からない部分も、 古着では大切な情報になる。
裾を返してみると、 内側には青い裏起毛が残っている。
50%コットン、50%ポリエステル。
タグに書かれた数字と、 実際に手で触れる生地がつながる瞬間だ。
プリントにも、時間が残っている

白いプリントを近くから見ると、 新品のプリントとは違う表情がある。
大きくデザインを損なうような欠損は見られないが、 表面には経年を感じさせる細かな変化がある。
均一ではないところも含めて、 この一着が新品ではないことを教えてくれる。
コンディションについて


生地の一部には、 光の当たり方によって黒っぽいシミや色ムラのように見える箇所がある。
写真では見え方が変化するため、 汚れなのか、生地の色変化なのかを断定することは避けたい。
また、ヴィンテージ品のため、 写真ですべての細かな経年変化を写し切れていない可能性もある。
BONでは、 こうした部分も含めて現在の状態として紹介している。
袖と脇下も見ておく


ラグランスリーブの袖まわりや脇下も確認した。
古いスウェットでは、 プリントだけでなく、 こうした負荷のかかりやすい部分を見ることも大切だ。
小さな「WMU」から始まった調査
最初に目に入ったのは、 青いボディと少し変わった白いプリントだった。
でも、背中の三つの手を追ってみると、 そこにはWestern Michigan Universityへつながる手掛かりがあった。
さらにフロントの名前を追うと、 1936年から続くスピーチクリニックと、 Charles Van Riperという一人の研究者へ辿り着いた。
そして、もう一度フロントを見る。
We’re Picking Good Vibrations Up.
最初に見たときとは、 少し違って見える。
古着のおもしろさは、 有名なロゴが付いていることだけではない。
知らない文字。 知らない名前。 意味の分からない絵。
そこから一つずつ調べていくと、 服の向こう側にいた人や場所が、 少しだけ見えてくることがある。

商品情報
- ブランド:RUSSELL / SUPER WEIGHTS
- アイテム:クルーネックスウェット
- カラー:ブルー
- 表記サイズ:S 34-36
- 素材:50% POLYESTER / 50% COTTON
- 生産国:MADE IN U.S.A.
- 仕様:ラグランスリーブ / 裏起毛 / 前後プリント
- 身幅:約45cm
- 着丈:約62cm
- 袖丈:約71cm(襟付近から袖先まで)
※採寸は平置きで行っています。多少の誤差はご了承ください。
※ヴィンテージ品のため、経年による使用感や色の変化などがあります。
※生地の一部に、光の当たり方によって黒っぽいシミや色ムラのように見える箇所があります。掲載写真とあわせて状態をご確認ください。
Q.
背中の三つの手は何を表しているの?
![]()
ぼんちゃん先生
手の下には「W・M・U」と書かれているよ。
描かれた手はアメリカ手話(ASL)の指文字でW、M、Uを表した形と対応していて、「WMU=Western Michigan University」を手で表現したデザインと考えるのが自然なんだ。
Q.
Charles Van Riperって誰?
![]()
ぼんちゃん先生
言語・発話障害の研究や治療に大きな足跡を残した研究者だよ。
Western Michigan Universityの公式資料によると、1936年に大学へ来てスピーチクリニックを設立し、speech correctionを学ぶためのカリキュラムも作ったんだ。
特に吃音の研究と治療で知られていて、現在も大学のクリニックには彼の名前が残っているよ。
Q.
“Good Vibrations”はBeach Boysの曲と関係があるの?
![]()
ぼんちゃん先生
“Good Vibrations”と聞くと、The Beach Boysの同名曲を思い浮かべる人もいるよね。
でも、このスウェットのプリントとその曲を直接結び付ける資料は、今回の調査では確認できなかったよ。
だから「Beach Boysをモチーフにした」とは断定せず、この服では“vibrations=振動”とLanguage, Speech & Hearing Clinicとの組み合わせに注目しているんだ。
Q.
このスウェットは何年代なの?
![]()
ぼんちゃん先生
タグには「SUPER WEIGHTS BY RUSSELL」「50% POLYESTER / 50% COTTON」「MADE IN U.S.A.」と書かれているよ。
ヴィンテージ市場やタグ資料では、このタイプを1980年代頃として紹介する例が見られるんだ。
ただし、RUSSELL公式の完全なタグ年代資料を確認できたわけではないから、BONではタグだけから製造年を断定しないようにしているよ。
Q.
黒っぽく見えるところはシミなの?
![]()
ぼんちゃん先生
光の当たり方によって、黒っぽいシミや色ムラのように見える箇所があるよ。
ただ、写真では光によって見え方が変わるため、汚れなのか生地の色変化なのかまでは断定していないんだ。
古着だから、こうした部分も隠さず現在の状態として写真で紹介しているよ。
この一着は、Furugi Bonでご覧いただけます。
“Good Vibrations”という言葉。
Charles Van Riperの名前。
そして、背中に残された三つの手「W・M・U」。
この記事でたどった物語を残した、実物のスウェットです。
サイズやコンディション、細部の写真はオンラインストアでご確認いただけます。
コメント