背中のイルカは何を語る? U.S. NAVY EOD Mobile Unit Fourという知らない世界
一枚の古着を眺めていて、ふと気になる文字に出会うことがあります。
今回の一枚は、深いネイビーのボディに黄色のプリント。
胸元には小さな円形のマーク。そして背中には、それを大きくしたようなエンブレムとともに、こんな文字が並んでいます。
EXPLOSIVE ORDNANCE DISPOSAL
U.S. NAVY
MOBILE UNIT FOUR

最初は、アメリカ海軍の何かの部隊なのだろう、くらいに思いました。
ところが、その文字をひとつずつ調べていくと、このTシャツの向こう側に、これまでほとんど知らなかった世界が広がっていました。
一枚の古着から、知らない世界へ。
今回は、この背中に描かれたエンブレムを手がかりに、その先を少し旅してみたいと思います。
背中に現れた「EXPLOSIVE ORDNANCE DISPOSAL」

EOD。
これは、Explosive Ordnance Disposalの略称です。
日本語では一般に「爆発物処理」「不発弾処理」などと訳されます。
ただし、EODの仕事を単純に「爆弾を処理する人たち」と考えるだけでは、その全体像は見えてきません。
現在の米海軍EODは、爆発物や機雷、不発弾などによる危険を排除し、陸上だけでなく海中を含む環境で活動する専門部隊として位置づけられています。
米海軍の資料を辿ると、その歴史は第二次世界大戦期の爆弾処理や機雷処理にまで遡ります。
「EOD」という名前が生まれたのは1946年
米海軍NAVSEAの記録によれば、1946年、米海軍のMine SchoolとBomb Disposal Schoolが統合され、その訓練課程に「Explosive Ordnance Disposal」という名称が与えられました。
ここから「EOD」という言葉が使われるようになったとされています。
その後1951年には、米海軍が統合軍におけるEODの基礎訓練や研究開発について中心的な役割を担うようになりました。
つまり、このTシャツにプリントされている三文字は、単なるミリタリーデザインとして作られた言葉ではありません。
そこには、第二次世界大戦から続く爆発物処理技術の歴史がつながっています。
では「Mobile Unit Four」とは何なのか
背中の下部には、もう一つ重要な言葉があります。
MOBILE UNIT FOUR。
これは、Explosive Ordnance Disposal Mobile Unit Four、略してEODMU-4を示していると考えるのが自然です。
EOD Mobile Unit Fourそのものは、米海軍の公式史料にも登場する実在の部隊です。
Naval History and Heritage Commandには、2005年にExplosive Ordnance Disposal Mobile Unit Four Detachment 12の隊員が、海上保安活動を想定した訓練を行っている記録が残されています。
したがって、このプリントにある「Mobile Unit Four」が実在する米海軍EOD部隊の名称と一致することまでは確認できます。
ただし、ここで一つ線を引いておきたいことがあります。
このTシャツが実際にEODMU-4の隊員へ支給されたものなのか、部隊内で制作・販売されたものなのか、あるいは別の経路で作られたものなのかは、現時点では確認できません。
古着では、「デザインから分かること」と「その個体そのものの来歴」は分けて考える必要があります。
エンブレムを、ひとつずつ見てみる


背中の図案をじっくり見ると、いくつものモチーフが組み合わされていることに気づきます。
左上──EODの徽章を思わせる意匠
円の左上には、爆弾と稲妻、月桂樹のような形を組み合わせたマークがあります。
これは米軍で用いられるEOD Badgeの意匠と非常によく似ています。
NAVSEAは、EOD Badgeを構成するモチーフについて公式に意味を説明しています。
- 爆弾──EODの歴史的かつ主要な対象である不発弾を表す。
- 稲妻──爆発物が持つ破壊力と、それを無害化しようとするEOD要員の勇気と専門性を象徴する。
- 盾──爆発を防ぎ、周囲の人や物を守るという任務を示す。
- 月桂樹──事故の可能性を減らしてきた功績を象徴すると同時に、任務中に命を落としたEOD要員を記憶する意味を持つ。
ただし、このTシャツに描かれた左上の図案が「公式EOD Badgeそのもの」と断定するのではなく、公式のEOD徽章をベースにした、あるいは強く意識したデザインと見るのが安全でしょう。
右上──昔ながらの潜水ヘルメット
右上には、大きな丸い窓を持つ昔ながらの潜水ヘルメットが描かれています。
なぜ爆発物処理の部隊に、潜水のモチーフがあるのでしょう。
その答えの手がかりは、米海軍EODの任務そのものにあります。
米海軍のEODとNavy Diverは現在も、水中での活動や機雷対処、潜水を伴う任務・訓練と深く関わっています。
米海軍の訓練機関にも、現在Center for Explosive Ordnance Disposal and Divingという名称が使われています。
つまり「EOD」と「潜水」は、偶然一緒に描かれているわけではなく、海軍という環境では強い結びつきを持つ世界だということが分かります。
ただし、このエンブレムの潜水ヘルメットが具体的にどの任務や資格を表しているのかについては、今回確認した資料だけでは断定できません。
中央──海へ伸びるような稲妻
エンブレム中央からは、三方向へ稲妻のような線が伸びています。
EOD Badgeでも稲妻は爆発物の破壊力を象徴します。
そのため、この図案にも同様の意味が重ねられている可能性はあります。
しかし、このMobile Unit Fourのエンブレムにおいて三方向の線が何を意味するかを説明した一次資料は、今回確認できませんでした。
ここは想像で意味を決めず、分からないまま残しておきたいと思います。
下側──イルカと、もう一頭の海洋生物
そして、一番目を引くのが下側の二頭です。
上側は、形から見るとイルカと考えてよさそうです。
その下には、アザラシやアシカなどを思わせる海洋生物が描かれています。
米海軍では、イルカが潜水艦や水中分野に関係する徽章・意匠として用いられてきた例があります。
ただし、このEOD Mobile Unit Fourのエンブレムに描かれたイルカが、公式に何を意味しているのかまでは確認できませんでした。
同じく、その下の海洋生物についても、種別や意味を裏付ける一次資料は見つけられていません。
水中任務との関係を想像させる図案であることは確かですが、それ以上の意味をこちらから付け加えることはしないでおきます。
分からないことを、分からないまま残す
古着を調べていると、つい「答え」を見つけたくなります。
何年製なのか。
誰が着ていたのか。
なぜこのマークが描かれたのか。
けれど、古着には答えが残っていないこともあります。
今回も、EODという組織の歴史やMobile Unit Fourの実在までは資料で確認できます。
一方で、このTシャツがいつ、どこで、誰のために作られたのか。そしてエンブレムに描かれた海洋生物が何を意味するのかについては、分からない部分が残っています。
その「分からない」を無理に埋めないことも、古着を紹介するときには大切なのだと思います。
そして、もう一度Tシャツへ戻ってくる

歴史の話から、もう一度この一枚そのものへ戻ってみます。
ボディはFruit of the Loom。
タグにはXL / 100% COTTON / MADE IN U.S.A.の表記があります。
タグの仕様や縫製などから、1990年代頃の一枚と考えていますが、製造年を特定できるコピーライトや年代表記は確認できていないため、年代については推定としてご紹介します。
袖と裾はシングルステッチ


30年ほどの時間が作ったネイビー

このTシャツでもう一つ好きなのが、ボディの色です。
新品の濃紺とは違う、少し柔らかく褪せたネイビー。
その上に黄色のプリントが残っています。
プリントだけを見れば特殊な任務を持つ部隊の世界につながる一枚ですが、服として見ると、決して派手ではありません。
ジーンズにも、チノにも、軍パンにも合わせやすい。
背景を知らなくても着られる。でも、知ると少し違って見える。

※AIによる着用イメージ画像です。実際の商品状態・色味・プリントの細部については実物写真をご確認ください。
そんな古着です。
この一枚を、もう少し近くで。
90s USA製 U.S. NAVY EOD Mobile Unit Four Tシャツの実物写真、サイズ、コンディションはオンラインショップでご覧いただけます。
※一点ものの古着のため、売り切れの場合があります。
コンディションについて
古着のため、全体に着用や経年による褪色・風合いが見られます。
また、首元と左袖裏側の縫製部分に、一部糸の飛び出しがあります。


大きく生地が裂けている状態ではありませんが、ヴィンテージ・古着のコンディションとしてあらかじめご確認ください。
サイズ
| 表記サイズ | XL |
|---|---|
| 肩幅 | 約51cm |
| 身幅 | 約57cm |
| 着丈 | 約71.5cm |
| 袖丈 | 約20cm |
| 素材 | コットン100% |
| 生産国 | MADE IN U.S.A. |
| ボディ | Fruit of the Loom |
| プリント | 前後両面プリント |
| 縫製 | 袖・裾シングルステッチ |
一枚の古着から、知らなかった世界へ

最初に見たときは、一枚のネイビーのTシャツでした。
けれど、背中に書かれた「EOD」という三文字を調べたことで、その先に第二次世界大戦から続く爆発物処理の歴史がありました。
さらに「Mobile Unit Four」を追うと、実在する米海軍の部隊へつながりました。
そして潜水ヘルメットやイルカを見ているうちに、海中という、普段の暮らしではほとんど意識することのない世界まで見えてきました。
もちろん、分からないこともたくさん残っています。
この服を誰が着ていたのか。
どこで作られ、どんな経路を辿って日本まで来たのか。
背中の海洋生物には、どんな意味が込められていたのか。
それでも、一枚の服からここまで遠くへ来ることができました。
古着は、過去を着るためだけのものではなく、過去を知る入口なのかもしれません。
何気なく手に取った一枚の向こう側に、自分の知らなかった世界がある。
そんな出会いも、古着の面白さのひとつです。
物語の続きを、実物で。
今回ご紹介したU.S. NAVY EOD Mobile Unit Four Tシャツは、Furugi Bonのオンラインショップでご覧いただけます。
※一点ものの古着のため、売り切れの場合があります。
ぼんちゃん先生のまとめ
ぼんちゃん先生と読み解く、一枚のTシャツの向こう側。

参考にした主な資料
- Naval Sea Systems Command(NAVSEA)「History of EOD」
- Naval Sea Systems Command(NAVSEA)「The EOD Badge」
- Naval History and Heritage Command「Explosive Ordnance Disposal」
- Center for Explosive Ordnance Disposal and Diving(U.S. Navy)
- U.S. Navy / Navy Expeditionary Combat Command 公開資料
※本記事では、米海軍などの公開資料で確認できた事実と、Tシャツの図案から読み取れる内容を分けて記載しています。資料で確認できない図案の意味や、この個体そのものの来歴については断定していません。
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