背中に並ぶ、106年分の勝敗。Ohio State Buckeyesの一枚から辿る、1890年からの物語。
古着を見ていると、ときどき、
表よりも裏返した瞬間に物語が始まる服があります。
今回の一枚も、そうでした。

白いボディの中央に、大きく描かれた
「Buckeyes」の文字。
その下には、Ohio Stateのロゴ、フットボールヘルメット、
スタジアムや選手を思わせるグラフィック。
そして一番下に、小さくこう書かれています。
106 Years of Football!
106年。
ずいぶん長い。
いったい、何の106年なのだろう。
その答えは、このTシャツを裏返すと見えてきます。
裏返すと、1890年から数字が並んでいた。

背中いっぱいに並んでいるのは、
1890、1891、1892、1893……という数字。
その横には、さらにいくつもの数字が並んでいます。

これは、Ohio State Footballの
各シーズンの戦績を並べた記録です。
上から始まる年は、1890年。
そして下まで追っていくと、最後は
1995年で終わっています。

1890年から1995年まで。
両端の年を含めて数えると、
106シーズン。
だから、このTシャツには
「106 Years of Football」
と書かれていたのです。
単に「106周年」という言葉だけを載せた服ではありません。
その106年を構成した一つひとつのシーズンそのものが、
背中に残されています。
最初の数字「1890」は、Ohio State Footballの始まりだった。
Ohio Stateの公式資料を辿ると、
同校でフットボールが始まったのは1890年です。
初代ヘッドコーチはAlexander Lilley。
そして1890年11月1日、
Ohio StateはColumbusにあったRecreation Parkで
最初のホームゲームを行いました。
相手はCollege of Wooster。
結果は、
Ohio State 0 − 64 Wooster。
最初のホームゲームは、大敗でした。
今ではアメリカのカレッジフットボールを代表する存在となったOhio Stateにも、
当然ながら、
まだ何者でもなかった時代がありました。
このTシャツの背中、一番上にある「1890」という数字は、
そんな最初の時代につながっています。
勝った年だけを並べたTシャツではない。

このTシャツを見ていて面白いのは、
「CHAMPIONS」の文字だけを大きく掲げた記念Tシャツではないことです。
背中に並んでいるのは、
歴代シーズンの記録そのもの。
良かったシーズンもあれば、
そうではなかったシーズンもある。
優勝した年だけを切り取るのではなく、
1890年から1995年までを、まるごと背負っています。
もちろん、制作した側がどのような思想でこのデザインを作ったのか、
そこまでを資料から断定することはできません。
それでも、このプリントを眺めていると、
こんなふうにも見えてきます。
強かった年だけが、歴史ではない。
勝った年。
負けた年。
優勝した年。
思うような結果が残らなかった年。
それら全部を積み重ねて、
Ohio State Footballという長い物語になった。
そう考えると、
背中いっぱいに並んだ数字が、少し違って見えてきます。
そして、最後に刻まれた「1995」。
このTシャツの記録は、1995年で終わっています。
1995年のOhio State Buckeyesは、
John Cooperヘッドコーチのもと、
11勝2敗という成績を残したシーズンでした。
そして、この年のOhio Stateを語るうえで、
欠かせない選手がいます。
Eddie George。
Ohio StateのランニングバックだったGeorgeは、
1995年に1,927 rushing yards、24 touchdownsを記録。
そして大学フットボール最高峰の個人賞、
Heisman Trophyを獲得しました。
Ohio State史上6人目の受賞者です。
ただし、ここは分けて考えておきたいところです。
このTシャツが
「Eddie GeorgeのHeisman Trophy受賞を記念して作られた」
と示す資料は、今回確認できていません。
プリントにも、Georgeの名前はありません。
分かっているのは、
背面の記録が1995年まで収録されていること。
そして、その1995年がOhio State Footballにとって
印象深いシーズンだったということです。
1995年シーズンのために作られたのか。
シーズン終了後に106年間を振り返る企画として作られたのか。
そこまでは、まだ分かりません。
古着には、ときどき
「分からないまま残る部分」があります。
それもまた、一枚の服を調べる面白さなのだと思います。
小さな一行が、この服の素性を教えてくれた。
フロントプリントの下。
目を凝らさないと見逃してしまいそうな場所に、
小さな文字があります。

そこには、
Produced by ATLANTIS under license from Ohio State
とあります。
Ohio Stateのライセンスのもと、
ATLANTISによって作られた一枚であることが分かります。
そして、このATLANTISを調べてみると、
話はもう一段、面白くなりました。
ATLANTISも、オハイオの会社だった。

Atlantis Sportswearは、
1985年にオハイオ州Piquaで創業した企業です。
同社の公式情報によれば、
1990年にはThe Ohio State Universityの
カレッジライセンス事業へ参入しています。
今回のTシャツにある
「under license from Ohio State」という表記ともつながります。
ネックタグには、
ATLANTIS
Quality Imprinted Sportswear
100% Cotton
Preshrunk
L
と記されています。

そしてケアタグには、
MADE IN U.S.A.
ここで、このTシャツの見え方が少し変わります。
オハイオの歴史を、オハイオで刷る。
Ohio State Football。
1890年から続く106年分の記録。
Ohio Stateからライセンスを受けた、
オハイオ州PiquaのATLANTIS。
そして、
MADE IN U.S.A.
この一枚は単に、
「90年代のUSA製カレッジTシャツ」
というだけではありません。
大学。
フットボール。
地元企業。
そして、それを着た人。
一枚のTシャツの中で、
いくつものものが同じ土地につながっています。
だから、この服では
「Made in USA」という文字だけを主役にはしたくありません。
もっと気になるのは、
なぜ、人は106年ものフットボール史をTシャツにして、
それを着ようと思ったのだろう。
ということです。

カレッジTシャツは、大学名を着るだけの服なのだろうか。

日本でカレッジTシャツを見ると、
「大学ロゴの入ったアメカジ」として捉えることがあります。
もちろん、それもこの服のひとつの見方です。
でも、この一枚を調べていくと、
その奥にあるものが少し見えてきます。
学校の名前。
チーム。
選手。
スタジアム。
勝った試合。
負けた試合。
学生。
卒業生。
そして、その土地で暮らす人々。
そうした長い時間の積み重ねが、
「Buckeyes」という一つの名前につながっていく。
だからこそ、
106年間の記録を背中いっぱいに刷ったTシャツが成立したのかもしれません。
カレッジTシャツとは、
大学の名前を着る服というより、
その場所に積み重なった記憶を着る服。
そんな見方もできるのではないでしょうか。
106年の歴史と、一枚のTシャツ自身の時間。

1890年から始まったOhio State Football。
その106年間を記録した一枚が作られ、
誰かが着て、
時間が流れ、
海を渡ってきました。
そして、この服には、
プリントされたフットボール史とは別の時間も残っています。

左脇下には、小さな穴があります。
新品の服なら、
単純に「傷」と呼ばれるものかもしれません。
けれど古着では、
そんな小さな痕跡も、
この服自身が誰かの時間を通ってきたことを教えてくれます。
背中には、
106年分のOhio State Footballの時間。
生地には、
このTシャツ自身が過ごしてきた時間。
二つの時間が、
一枚の服の上で重なっています。
古着を裏返してみる。
タグを見る。
小さな文字を読む。
すると、
今まで知らなかった土地の物語が始まることがあります。
この一枚も、
そんなTシャツでした。
ぼんちゃん先生と読み解く、一枚の服の向こう側。
Ohio State Buckeyesって何?
ぼんちゃん先生
「Buckeyes」は、The Ohio State Universityのスポーツチームに使われている愛称だよ。
今回のTシャツは、その中でも1890年から続くフットボールチームの歴史を題材にしているんだ。
なぜ「106 Years of Football」なの?
ぼんちゃん先生
背中に1890年から1995年までのシーズンが並んでいるからだよ。
1890年と1995年の両方を含めて数えると106シーズン。
「106」という数字は、ただの飾りじゃなかったんだね。
背中にびっしり並んでいる数字は何?
ぼんちゃん先生
Ohio State Footballの各シーズンの戦績だよ。
有名な優勝年だけを並べるのではなく、1890年から1995年までを年表のように見せているところが、
このTシャツの面白いところなんだ。
ATLANTISってどんな会社?
ぼんちゃん先生
Atlantis Sportswearは、1985年にオハイオ州Piquaで創業した会社だよ。
同社の公式情報では、1990年にThe Ohio State Universityとの
カレッジライセンス事業に参入したことが確認できるよ。
このTシャツにも「Produced by ATLANTIS under license from Ohio State」と書かれているんだ。
このTシャツは1995年製なの?
ぼんちゃん先生
背面の記録が1995年まで収録されているので、
1995年シーズン前後に企画・製造された可能性は高そうだよ。
ただし、正確な製造年を示す資料までは確認できていないから、
BONでは「1995年製」と断定せず、1990年代半ば頃の一枚として考えるのが安全だね。
このTシャツの一番面白いところは?
ぼんちゃん先生
106年という長い歴史を、言葉だけではなく、
1890年からの戦績そのものを背中に並べているところかな。
一枚のTシャツなのに、服であり、応援グッズであり、
小さなスポーツ年表でもある。そこが面白いんだよ。

背中に残された106シーズンの記録。
この一枚のディテールやサイズ、コンディションは、
FURUGI BONオンラインショップでご覧いただけます。
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