服だけが1997年に残った。Cleveland Indians “American League Champions” Tシャツが記録した時代
服には、ときどき「その時代にしか作れなかった一枚」があります。
今回BONにやってきたのは、ネイビーのボディいっぱいに 「1997 AMERICAN LEAGUE Champions」 と描かれた、一枚のベースボールTシャツ。
胸には、当時のCleveland Indiansのチーム名とロゴ。 そして小さく、 「League Championship Series 1997」 の文字が残されています。

1997年。
このTシャツが作られたころ、胸に描かれている名前もロゴも、 クリーブランドのメジャーリーグ球団を象徴するものとして使われていました。
しかし、2026年の現在。
そのチームはCleveland Guardiansという名前でプレーし、 このTシャツに描かれた旧ロゴもユニフォームでは使われていません。
つまり、この服には、 今では見ることのできない1997年のクリーブランドが、そのまま残っているのです。
1997年、「Champions」と書かれた瞬間

1997年のクリーブランドは、レギュラーシーズンを 86勝75敗で終え、アメリカン・リーグ中地区を制しました。
100勝近くを挙げて圧倒したシーズンではありません。 しかし、ポストシーズンに入ってからの戦いは強烈でした。
アメリカン・リーグ・ディビジョンシリーズでは、 前年のワールドシリーズ王者New York Yankeesと対戦。
5試合までもつれたシリーズを3勝2敗で勝ち抜きます。
続くアメリカン・リーグ・チャンピオンシップシリーズの相手は、 Baltimore Orioles。
こちらも簡単なシリーズではありませんでしたが、 クリーブランドは4勝2敗で勝利。
第6戦、延長12回。 Tony Fernandezの本塁打によって奪った1点を守り切り、 クリーブランドはアメリカン・リーグ王者となりました。

このTシャツに大きく描かれている 「1997 AMERICAN LEAGUE Champions」 は、まさにその瞬間を記念する言葉です。
けれど、「Champions」の物語には続きがあった
アメリカン・リーグを制したクリーブランドは、 ワールドシリーズでFlorida Marlinsと対戦します。
シリーズは最終第7戦までもつれました。
第7戦。 クリーブランドは終盤まで2対1でリードしていました。
しかし9回、マーリンズがCraig Counsellの犠牲フライで同点。 試合は延長戦へ入ります。
そして延長11回。 Edgar Renteríaの一打でマーリンズが3対2のサヨナラ勝ち。
クリーブランドの1997年は、 世界一まであと一歩というところで終わりました。
でも、このTシャツにはその結末は書かれていません。
書かれているのは、ただ一言。
Champions.
だからこそ、この一枚がおもしろい。
この服の時間は、 クリーブランドがアメリカン・リーグ王者になった歓喜の瞬間で 止まっているようにも見えるのです。
1997年の名前とロゴが、そのまま残っている

そして2026年からこのTシャツを見ると、 もう一つ無視できないものがあります。
胸に大きく描かれた、 当時のCleveland Indiansというチーム名と旧ロゴです。
MLBと球団は協議を重ね、 この旧ロゴを2018年シーズン終了後、 2019年からユニフォームで使用しないことを決定しました。
さらに2020年には、球団が長年使用してきた 「Indians」という名称を変更する方針を発表。
2021年7月、新しい名称として Cleveland Guardiansが発表され、 2021年11月に正式な移行が行われました。
その背景には、 アメリカ先住民を表す名称やイメージをスポーツチームの名称・シンボルとして使用することをめぐる、 長年の議論や批判がありました。
BON JOURNALでは、 ここで過去を単純に善悪のどちらかへ分類したいとは考えていません。
大切なのは、 1997年には球団を象徴するものとして存在していた名称とロゴが、 時代と社会の変化の中で使われなくなったという事実です。
古着は、現在の価値観に合わせてプリントを書き換えることはできません。
だからこそ服は、 ときにその時代の空気まで残してしまいます。
首元をめくると、もう一つの「1990年代」があった

もう一つ、このTシャツで興味深いのがタグです。
首元に縫い付けられているブランドは Lee SPORT。
表記サイズはXLです。
ところが、タグをよく見ると 「NUTMEG MILLS INC.」の文字があります。
さらに先ほど見たプリントにも、 「NUTMEG © MLB 1997」 と記されています。
「Lee SPORTなのに、なぜNUTMEG?」
ここにも1990年代のスポーツウェア業界の変化が隠れていました。
Lee SPORTとNUTMEG
Nutmeg Millsは、1980年代から1990年代にかけて、 アメリカのプロスポーツやカレッジスポーツのライセンスアパレルを手がけた企業です。
1994年、Nutmeg MillsはVF Corporationの傘下に入りました。
そして翌1995年の報道では、 それまでNutmeg Millsの名で展開されていたスポーツウェアを、 新しい「Lee Sport」ラベルで展開していく動きが確認できます。
Leeも当時、VF Corporation傘下のブランドでした。
つまり、
Lee SPORTのタグ
+
NUTMEG MILLS INC.の表記
+
NUTMEG © MLB 1997
という組み合わせは、 当時の企業関係やブランド移行の流れと矛盾するものではありません。
むしろ、1990年代半ばのスポーツライセンスウェアの変化を考えるうえで、 興味深い痕跡の一つといえます。
ただし、このタグだけでは分からないこともある
古着を調べていると、 年代や背景が分かってくるほど、 つい「もっと特別な一枚なのでは」と想像したくなります。
ですが、現物から確認できる事実と、 想像は分けて考える必要があります。
このTシャツから確認できるのは、
- 「1997 AMERICAN LEAGUE Champions」のプリント
- 「League Championship Series 1997」の表記
- 当時のCleveland Indiansの名称とロゴ
- 「NUTMEG © MLB 1997」の表記
- Lee SPORTタグ
- 表記サイズ XL
- 100% COTTON
- NUTMEG MILLS, INC.の表記
- ASSEMBLED IN MEXICO / U.S. COMPONENTSの表記

一方で、現時点の資料だけから 「ALCS終了直後に球場で販売された」 「選手やスタッフが着用した」 「ロッカールーム用に作られた」 といった出自までは確認できません。
BONでは、そこを物語として付け足すことはしません。
服だけが、1997年に残った
1997年10月。
クリーブランドはアメリカン・リーグを制し、 街には「Champions」と書かれた服が並びました。
その後、チームはワールドシリーズ第7戦まで進み、 あと一歩のところで世界一を逃します。
さらに20年以上が経ち、 チームの名称もロゴも変わりました。
それでも、このTシャツには、 何ひとつ書き換えられていません。
Champions。
Cleveland Indians。
1997。
Lee SPORT。
NUTMEG。
すべてが、当時のままです。
古着のおもしろさは、 「古い服を着ること」だけではないのかもしれません。
その服が作られたあと、 世界がどう変わっていったのか。
そして、変わっていった世界の中で、 服だけが何を残しているのか。
そんなことまで考えさせてくれる一枚でした。

ぼんちゃん先生と読み解く、一枚の服の向こう側。
Q.
このTシャツの「Champions」は、ワールドシリーズ優勝という意味?
ぼんちゃん先生
いいえ。このTシャツが記念しているのは、1997年のアメリカン・リーグ優勝です。Clevelandはアメリカン・リーグ・チャンピオンシップシリーズでBaltimore Oriolesを4勝2敗で破り、アメリカン・リーグ王者としてワールドシリーズへ進みました。
Q.
じゃあ、1997年は世界一にはなっていないの?
ぼんちゃん先生
はい。ワールドシリーズではFlorida Marlinsと第7戦まで戦いましたが、延長11回の末に3対2で敗れました。だから胸の大きな「Champions」は、世界一ではなく「1997年のアメリカン・リーグ王者」を意味しています。
Q.
なぜ今は、このチーム名とロゴを使っていないの?
ぼんちゃん先生
アメリカ先住民を表す名称やイメージをスポーツチームの名称・シンボルとして使用することについて、長年にわたり議論や批判がありました。旧ロゴは2019年からユニフォームでの使用を終了し、その後、球団は「Cleveland Indians」から「Cleveland Guardians」へ名称を変更しました。このTシャツには、1997年当時に使われていた名称とロゴがそのまま残っています。
Q.
Lee SPORTなのに、なぜ「NUTMEG」と書いてあるの?
ぼんちゃん先生
Nutmeg Millsは1994年にVF Corporation傘下となり、その後、スポーツウェアをLee Sportブランドで展開する動きが確認されています。そのため、このTシャツに見られる「Lee SPORT」「NUTMEG MILLS, INC.」「NUTMEG © MLB 1997」という組み合わせは、当時の企業関係やブランド移行の流れと矛盾しません。ただし、この表記だけから販売場所や生産数、特別な支給品だったかどうかまで判断することはできません。
この1997年 Cleveland Indians Tシャツは、FURUGI BONで販売しています。
写真・サイズ・コンディションなど、商品の詳しい情報はこちらからご覧いただけます。
参考資料
本記事では、現物から確認できる情報に加え、 MLB公式資料、Cleveland Guardians公式資料、 Baseball-Referenceおよび当時の報道資料を参照しました。
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