Grandpa’s Grey Hares(グランパズ・グレイ・ヘアーズ)─ 5匹のウサギと名前が残された、DISCUS ATHLETICのUSA製スウェット

古着を見ていると、ときどき「誰が着ていたのだろう」と考えてしまう服があります。
ブランドが珍しいからでも、値段が高いからでもありません。
そこに、誰かがいた痕跡が残っているからです。
今回見つけたグレーのスウェットにも、そんな痕跡が残されていました。
5匹のウサギと、5つの名前
胸に刺繍されているのは、
「Grandpa’s Grey Hares」
という言葉。
その下には5匹のウサギが並び、それぞれに名前が添えられています。
STEPHANIE
NICHOLAS
ALECIA
MICHAEL
SONIA
よく見ると、ウサギはすべて同じ姿ではありません。
そして、その一匹一匹に名前があります。
ここまで来ると、単なる飾りとしてのウサギではなかったのではないか、と考えたくなります。
ただし、この5人が誰なのかは分かりません。
「Grandpa」という言葉から、家族に関係する一着だった可能性も想像できます。しかし、それを裏付ける資料はこの服には残されていません。
だから、ここでは答えを決めないことにします。
分かっているのは、5つの名前がこの服に刺繍され、時間を越えて残っているということだけです。
「Grey Hares」という言葉
もうひとつ気になるのが、「Grey Hares」という言葉です。
hareは英語で「野ウサギ」。
一方、「grey hairs」は灰色や白くなった髪を表す言葉です。
そのため「Grandpa’s Grey Hares」という言葉には、「おじいちゃんのウサギたち」と「おじいちゃんの白髪」を重ねた言葉遊びが含まれているようにも読めます。
ただし、これも製作者が実際にその意味を込めたと確認できる資料があるわけではありません。
分からない。
でも、だからこそ想像してしまう。
古着には、ときどきそんな余白があります。
ボディはDISCUS ATHLETIC
この刺繍が施されているボディは、DISCUS ATHLETIC(ディスカス アスレチック)。
DISCUS ATHLETICは、アメリカ・ヴァージニア州でTULTEXによって1973年に立ち上げられたスポーツウェアブランドです。
ブランド名の「DISCUS」は円盤投げに由来し、タグにも円盤を投げる人物が描かれています。
ブランドを象徴する素材のひとつとして知られているのが、ポリエステル50%、コットン50%の「TC」スウェットです。
今回の一着も、品質表示には50% COTTON / 50% POLYESTERと記されています。
この50/50のTC素材は、軽さや柔らかさなどを特徴とし、特に1980年代から1990年代にかけて広く愛用されました。
ただし、素材だけから今回の一着の製造年を特定することはできません。
タグに残る「MADE IN U.S.A. BY TULTEX」
タグの上部をよく見ると、
「MADE IN U.S.A. BY TULTEX」
という文字が残っています。
この表記から、このスウェットのボディがアメリカ製であることが確認できます。
表記サイズはX-Large。
ラグランスリーブ、リブ仕様の首元と袖口。そして裾付近には小さなDISCUS ATHLETICのピスタグも付いています。
派手なディテールではありません。
そのグレーのスウェットに、誰かが5匹のウサギと5つの名前を残した。
そこが、この一着のおもしろいところです。
裏返すと、刺繍の痕跡が残っていた
スウェットを裏返してみます。
表から見ると整然と並んでいたウサギと名前。
その裏側には、刺繍を支える芯材と糸が残っています。
こうした芯材は、刺繍するときに生地の伸びや歪みを抑え、デザインを安定させるために使われるものです。
現在の機械刺繍でも、スウェットやTシャツなどの伸縮する生地には芯材が使われます。
そのため、「芯材が残っているから古い」と判断することはできません。
それでも裏側を見ると、完成した表側だけでは見えなかった「作られた跡」を見ることができます。
誰かが図案を決め、名前を入れ、グレーのスウェットに刺繍した。
ブランドタグとは違う、もうひとつの履歴が服の裏側に残っています。
ぼんちゃん先生に聞いてみよう
この5人は、おじいちゃんの孫なの?
ぼんちゃん先生
そう想像したくなるデザインだけど、今のところ「5人がおじいちゃんの孫だった」とまでは確認できないんだ。
スウェットには「Grandpa’s Grey Hares」という言葉と、STEPHANIE、NICHOLAS、ALECIA、MICHAEL、SONIAという5つの名前が刺繍されているよ。
家族のために作られた一着だった可能性は考えられるけれど、それを裏付ける資料は残されていない。だからBON JOURNALでは、分かっていることと想像できることを分けて考えているんだよ。
「Grey Hares」ってどういう意味なの?
ぼんちゃん先生
「hare」は英語で「野ウサギ」という意味なんだ。
一方で、よく似た響きの「grey hairs」は、灰色になった髪や白髪を表す言葉だよ。
だから「Grandpa’s Grey Hares」は、「おじいちゃんのウサギたち」と「おじいちゃんの白髪」を重ねた言葉遊びのようにも読めるんだ。
ただし、実際に作った人がその意味を込めたのかまでは確認できない。ここも、このスウェットに残された楽しい謎のひとつとして考えるのがよさそうだね。
刺繍の裏に残っている紙みたいなものは、昔の刺繍だからなの?
ぼんちゃん先生
それだけでは「昔の刺繍だから」とは判断できないんだ。
裏側に見えるものは、刺繍するときに生地を安定させるための芯材とみられるよ。刺繍中に生地が伸びたり歪んだりするのを抑える役割があるんだ。
こうした芯材は現在の機械刺繍でも使われている。特にスウェットのような伸縮する生地では、今でも珍しいものではないんだよ。
だから、この芯材だけを見て年代を決めることはできない。でも、服を裏返すことで、表からは見えない「刺繍が作られた跡」を見ることができるのは面白いところだね。
じゃあ、このスウェットは何年代のものなの?
ぼんちゃん先生
今回確認できた情報だけでは、製造年をピンポイントで特定することはできないんだ。
DISCUS ATHLETICでは、コットン50%・ポリエステル50%のTCスウェットが1980年代から1990年代にかけて広く使われていたことが確認できるよ。
今回のスウェットも50/50ボディで、タグには「MADE IN U.S.A. BY TULTEX」と記されている。だからアメリカ製であることは確認できるんだ。
ただし、それらの特徴だけで「○年製」や「90年代製」と断定するのは難しい。BON JOURNALでは、確認できない年代を無理に決めず、分かっている情報をそのまま残しておくことにしたよ。
誰の服だったのだろう
STEPHANIE。
NICHOLAS。
ALECIA。
MICHAEL。
SONIA。
この5人が家族だったのか。
友人だったのか。
それとも、私たちが想像しているものとはまったく違う関係だったのか。
今となっては、それを知る手掛かりはほとんどありません。
でも、名前が残っているということは、このスウェットが作られたとき、そこには具体的な「誰か」がいたということです。
大量に作られたDISCUS ATHLETICのグレーのスウェット。
その一枚が、刺繍によって誰かだけの服になった。
そして時間が経ち、持ち主のことは分からなくなっても、名前だけは残りました。
古着のおもしろさは、有名なブランドや希少な年代だけにあるわけではないと思います。
服に残った小さな痕跡から、もう知ることのできない誰かの時間を想像する。
そんな一着もまた、古着なのだと思います。
このスウェットの詳細を見る
今回ご紹介した「Grandpa’s Grey Hares」のスウェットは、
Furugi Bon Online Storeで実物の写真、サイズ、状態などをご覧いただけます。
※本記事では、衣類に残されたタグ・素材表記・刺繍などから確認できる事実と、そこから考えられる可能性を分けて記載しています。「Grandpa’s Grey Hares」の制作背景や、刺繍された5人の人物関係については確認できる資料がないため断定していません。
コメント